海/暗合
て上着を取りに行くのは面倒だったからそのまま学校へ行くことにした。風は強かった。雨が斜めに俺の顔を叩いた。小学生の頃、母親は俺を殴った。蹴った。あるいは顔をビンタした。この雨は母親のビンタに似ていると思った。
雨が降ると、海は荒れるのだろうか。荒れた海に入ると、どんな風に溺れるのだろうか。
身寄りのないシワだらけのじいさんが操るマリオネットのように、肉がサメに食われるまで踊り続けるのだろう。月の光だけが侵入を許される深海でいつもサメが俺たちを待っているのだ。サメの歯は、月の光を反射してキラキラと光っている。
母親に暴力をされている時に、一番許せなかったのは母親にやり返すことの出来ない自
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