ひかりの手紙/やまうちあつし
 
もう一度だけ
手紙を渡す機会があるなら

ひかりあれ、と書くだろう

そんな資格も
余裕もないけど
だからこそ
とは言えないか

闇あるところに光が
なんていう噂ではないか

忘れられないことや
思い出せないことが
なんとも多い

わたしのペンはどうしても
それらを描き出すことができない
インクが切れた訳でもないのに

だからせめて書くだろう

ひかりあれ

けれどやっぱり
渡さないかな

手紙を小さく折りたたみ
胸ポケットに忍ばせて

黒いまま生きていく

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