すべてはじめから/ただのみきや
低い天井に音楽が響く
裸の天使の鳥籠のよう
ひりひり見開く傷口
冷凍肉のかたまりに
ガラス金属プラスチック
カラフルな鋲をボウルいっぱい
焦点を拒む視線
ただ瞳の中にゆれる灯が
焦がす空気のくちびるに
ふれる指先は蝶のよう
つかまえられない残像との戯れ
灰をまさぐる祈りと共に
*
薄暗闇に街灯のよう
雪を被ったナナカマド
たわわな赤に触れる仔の
ひとさし指の切なさを
鴉がおおう夕間暮れ
頬は端境の樹木に似て
街にかかった大きな月も
離れて上れば小さく見えて
そぎ落とせばそぎ落とすだけ
人であることの赤裸々
頭蓋をこじ開けて仰ぎ見る
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