自画像/
やまうちあつし
一生かけて
一枚の自画像を
雨の日も晴れの日も
鉛筆を動かす
長い年月を経て
現れたのは
自分とは似ても似つかぬ
見知らぬ誰かの肖像だった
呆然と立ち尽くす
これはいったい誰なんだ?
顔でも洗って落ち着こうと
洗面台へ
ひとしきりジャブジャブと
しぶきをあげて
体を起こすと
鏡に写ったものは
描きあがった
自画像どおりの顔の人物
これはいったい誰なんだ?
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