冬の禁断症状/ただのみきや
 
鬱蒼

鉈で枝をはらう
雑木林に入口をつくる
入ったからといってなにもない
暗く鬱蒼としたそこに
誰を招くわけでもないが
時おりもの好きな通行人が
ちょっと覗いては去ってゆく
お宝もなければ神秘もない
膨らむ気配だけがある
見定めればなんてことのない
野ねずみ程度のなにか
鉈で枝をはらう
わたしは入口をつくるだけ





ああ雲

あの雲の厚いこと
    厚いこと
山にかかり平野にかかり
海にまでかかる
ただ雪を降らせるだけ
あの茫漠としたふくらみ
つかむこともできず
どかすこともできず
消えるまで待つしかなく
消えた
[次のページ]
戻る   Point(4)