清算されてゆくかなしみに/望月 ゆき
 
晩夏におとずれた出会いを、わたしはいとおしくてたまらなかった。



最初のデートでどこへ行ったかも忘れてしまうくらい、あなたのことだけを見ていたので、わたしたちにはアルバムをつくる時間さえもなかった。
今にして思えばそれはある意味正しい恋の仕方だったかもしれない。
わたしたちの流れてきた時間は、残しておいてあとで懐かしむためのものでもなければ、水槽の中に溶かして、もう二度とさがせないようにする必要も、なかった。
あなたのどこにひかれたのだろうと考えると、たぶん、笑ったときの口だった。数ミリ、はじっこが持ち上がる。
あなたはお腹の底から笑うことを知らないまま大人になったような
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