ベルリンショートバージョン/モマリサ公
そして扉の向こう側になにかがあふれている
閉じていた扉をあけるとそこには透明な顔ばかりがあっちやこっちを向いている
みんなばらばらにどこかにいこうとして
ただ浮かんでいるだけ
あたしもおなじように顔だけになってただよっていてもいいんだよ
笑い声が聞こえてまた扉をあけると
うまれたばかりの声がうようよと床のうえをおおいつくしている
鏡にうつるのは声ばかりで実態がない
実態なんかなくてもいいんだよ
窓からは何本もの虹がのぼりはじめている
いくつあるんだろう
太陽はかすみがかっている
太陽を数えながら声になってもいいんだよ
あたしたちが加速して行きながらいつのまにか
[次のページ]
戻る 編 削 Point(1)