声/ふるる
友よ、と言った君の声をこの耳は聞いた
この耳を大切にしたい
けれども声はすぐに去っていった
彼方へ、とあの人も言った
あの声をそっと眺めていたい
けれどももうここにはなく
日々打ち上げられ花開き、瞬く間に散る声たち
愛おしくても眺めたり束ねたりはできない
ボイスレコーダーには口も舌も体温もないのだから
自らを押し込めている身体から唯一
自由にどこへでも行けるのは声だけ
空気を震わせた波は伝わるだろう土星の裏側にも
熱く
燃えているのは心だったけれども
言葉はじゅうぶんに冷えていた
冷淡なのとは違う
何も余計なものを乗せない注意深さがそうしている
友よ、
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