月をみあげるうさぎ人/秋葉竹
 

  

町外れの、
小さな赤い屋根の家に
ひとりのうさぎ人が住むと云う。

夜には、
秋の虫たちの声に囲まれて
ちょっとだけ
うるさいくらいだ、

ちょっとだけ、
残酷な、
傷跡も残らないような
秋の夜の寂しさのように。

そして、
冬の訪れを感じるまで
寒さに耐える
生きる準備をして。

町外れでは、
小さな赤い屋根の家に
ひとりのうさぎ人が静かに暮らす。

夜に泣く。
月の震えるような嘘の模様を
おろかな嘘でも
ただこころが悲しければ
それはまちがいなく、深い傷に泣く
ほんとうと、
同じ横顔なんだよ、と。

だれに、
地平の果てまで
連れて行かれたとしても。
月の表面に、
刻まれたうさぎの涙の跡をみたと
いいはる、たとえば嘘だと
みんなにバレていても、

どこかに染み込む
廃墟の静けさや清らかさや
そして
寂しさの果てに。

歌うたうように泣くか、
秋の虫たちのを名前を聴こうか、

それはただ
うさぎを恋うる虫たちの聖域か。







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