地球の昼休み/岡部淳太郎
てゆく
私はただ思う
思うこと
それが私の特技
この地球上の
どこで人が生きているのか
どこで人が死んでいるのか
どこで人が いままさに死につつあるのか
そうしたとりとめもないことを
ただ思う
私は人ではないのかもしれない
私は地上にしっかりと足をつけず
踏みしめずにただ 浮かぶ
浮かぶこと
それが私の特技
私は浮かんで 漂いつづける
私の足裏と地上の間には
数ミクロンの見えない隙間がある
そのようにして私は浮かび漂い
さらに上方に
死者の魂が肉体を離れるように浮かび上がってゆく
あるいは私は
この地球上に潜入した
異星人のスパイなのかもしれない
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