どっちも狂ってた/竜門勇気
 
いた犬が毎日涙を拭いに来る

俺の子供が死んだ日
雷と雨がひどくて
世界中の誰一人、外出できないような日だった
閉じ込められた無人島の四人
あいつが死ぬのを待つような気分だった
何もかもなすすべがなく
看護師もどこか遠くにいる
真上で鳴っている雷鳴と別に
また別の雷鳴がどこかからここへ
破滅を伴ってにじり寄ってくる

にわかに雨が降り出した
夏にはよくあることだ
もう少し経てばなにもかも過ぎ去って
割れたガラスみたいな晴れ間が広まる
今日も誰かが死ぬ
昨日と同じように
違う誰かが
彼は誰かが楽しんでると
もう、辛抱ができない
みんな何が楽しいかわからない
コップを叩きつけて
コーヒーのこぼれたテーブルにだけ悪態をつく
”なんだか、なんだか、僕は毒なのかもしれない”

ぼくはもう、知らないうちに
だれも助けられない毒になってたのかもしれない
どれだけ薄めても奪うだけの
毒になってるのかもしれない

ドアが開いて夏のおわりが匂っている
なんだか、毒みたい
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