どっちも狂ってた/竜門勇気
 

彼女は誰かが楽しんでると
もう、辛抱ができない
あれって何が楽しいかわかんないの!
コップを叩きつけて
ミルクのこぼれたテーブルにも悪態をつく
”なんだか毒みたい”

彼氏は上の空で乾ききったサンドウィッチを見てる
猜疑心と不幸な身の上で起きた経験が
彼が出会うすべてを邪悪な不愉快さを与える化け物に変えた
ミルクがサンドウィッチの皿の上で玉となって
ゆっくり動いてパンの中に吸い込まれた
”これは、毒だよ、毒は食べたくない”

ウェイターはウェイトレスのスカートの裾を見ていた
かさかさの膝小僧ってすこしきれいだな
藍色の布が揺れながら時々引っかかって
時計の針を
[次のページ]
戻る   Point(2)