草をむしる/
オイタル
墓石の彼方に
夕暮れの空が滲んで広がる
石の積まれた古びた土の
草を小さくむしりとる
焦げたような夏の匂いがする
ひときわ小さく積まれた石の
そばに軍手を置く
覚えのない旅を思い出す ふと
小石は名であるから
名とは記憶であるから
積まれた小石は記憶であるから
記憶は鼻を焦がすような匂いであるから
その小石は
誰かに呼ばれた証であるから
だから 識別のために
私は草をむしる
戻る
編
削
Point
(1)