薬/葉leaf
 



職場環境が劣悪すぎて、夏のある日不安の発作に襲われた。その後つらい不安がときおりやってきて、胃は締め付けられるよう、理由もなく涙が出てきた。医師からは「不安障害」との診断がおり、仕事を休むように言われた。だが私は休めなかった。我が家の家計は決して潤沢ではない。病休をしている余裕はない。妻と娘の生活を私は支えなければならぬ。私は不安がやってきては安定剤を飲み、仕事をしながら何とかやり過ごして一カ月、ようやくかつての心の防壁は復活し、私にはもう二度と不安がやってこなくなった。
私の心を癒したのは何よりも愛する者たちを支える覚悟である。妻と娘の生活を支えるためには自分が壊れてはいけない、その一念でこの危機を乗り切った。私はもはや容易に壊れることができない、強靭な心身を手に入れた。子どもが生まれてからダイエットにも成功し、健康診断で悪い値が出なかった。家族を持つということ。それは何よりも心身の薬だ。予防薬であり回復薬であり、私を巨大な防壁と化す変身の薬である。

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