tile/松岡宮
tile という名の紛失防止タグが
小さな身体を四角く畳み
働きすぎ
鞄の底で 眠らないまま業務を遂行しつづける
<わたしはうたいたいだけなんです ほんとはミュージシャンだから>
ほら お腹を押すと歌が出てくる
(「コーヒーでもいかが?」繋がっている財布が声をかける)
今夜も眠ってはいけないその薄い身体にカフェインを仕込み
歌などくちずさみながら
はっ。
(どうしたの?)
(あ、夢だったのか)
何か 体験したらしい
(どんな夢だったか 話してごらん)
飛びました とりあえず。
それはユリカモメの背中を追いかけて県境の橋から身を投げる体験でし
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