蝶蝶の缶詰/はるな
 


どんなに濃い風が吹いてももう思い出みたいなものしか書けなくなって、
名前はもちろんその表情、片側に多いほくろや厚い手のひら、
柔軟剤の匂い、街の音も乗り換えかたもぜんぶ変わって
そりゃあそうだよねって笑うやり方もどうだったかな
その感慨もつるんと遠のいてしまった
誰かほかのひとの思い出みたいなってしまった、
早く開けなければならなかった、
でも手遅れになったいまは決して開けてはならない、
開けてはならないと思いながら抱き続けるしかできない、
蝶蝶の缶詰



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