おやすみなさいもいえないで/武下愛
 
とうとつにくるむねのいたみに、かけれなかったことばをおもう。すなおにいえたなら、どんなにらくだっただろうか、おたがいに。
つたえられないことだけがつのって、かわりになくことしかしらず。ちょくにいえたなら、どんなにしあわせだっただろうか、おたがいに。
いのちのかたちに、なまえをつけず。すなおにつたえられたら、どんなにくるしまずにいれたんだろうか。おたがいに。
おはようのかわりに、おやすみなさいもいえず。ことばにしていたら、またあしたはつづいていただろうか。ほんとうに。
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