知らない国の大きな太鼓/竜門勇気
 

曲がった声の刺さった羽のなかで
切り分けられて爪をたてられたとき
本当に、本当に
どこか遠くに来たんだって思った

真っ直ぐなビルがあって
ひずんだ音を立てていた
夏の太陽がどこかにあるってのがわかる
足元に歯糞みたいな日差しの切れ端しかないのに
やたらと暑くて
そこら中で出来損ないのビールを売ってる

うずくまってそのまま僕は死ぬ
ビールを買う金が無いからだし
ビールを飲むために誰かをぶっ殺す覚悟ができないからだ
うずくまって顔を手のひらで擦った
心臓の音がゆっくり大きくなる
声色を変えて自分に話しかけることにしよう
いいアイデアだ
とてもいいアイデアだ
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