遠いせいしゅん/tonpekep
 
(いいちこを呑む夏の夕暮れ
人生はとてもぼんやり過ぎて
私は詩を書いていたりする)

あれは遠いせいしゅん
わたしはわたしに呼びかけたりした
美しかったりした

あれは遠いせいしゅん
どこかへわたしを見失ったり
わたしはわたしを捜したりした

わたしは一所懸命だったりした
今でも一所懸命だけれども
それはもうただ一所懸命なだけ

あれは遠いせいしゅん
わたしはひたすらに泣かないようにしたりした
泣く前に旅立ったりした

それでもどこかの電車の駅で
向日葵が揺れたりしたら泣いたんだ
激しく蝉が鳴く見知らぬ土地で

わたしは誰かを捜していた
わたしを知る人を
わたしを知っている見知らぬ人を

あれは遠いせいしゅん
ただそれは
そこになかったのかもしれない

随分と夏は堆積されて
いつの間にかわたしはわたし以外の者を愛おしく思う
そこに泣いたりするわたしがいることを幸せだと感じたりする

あれは遠いせいしゅん
間違っていたりすることが
楽しかった
戻る   Point(6)