つみうみ/いとう
 
さん
がじつは貪欲であることを知っている野村さんの奥さん
が野村さんの奥さん
であることを知っている野村さんの奥さん
にはきちんと名前があることを知っている野村さんの奥さん
のその名前も知っているが野村さんの奥さん
を野村さんの奥さん
と私は名付ける






名付ける
という行為には罪が伴う
場合がある

我々は罪の海原で戯れている
という比喩

あるいは野村さんの奥さんでいっぱいの海
というパロディ





野村さんの奥さんの波が押し寄せる
野村さんの奥さんはごろごろと浜辺に打ち上げられ
たくさんの野村さんの奥さんがたそがれに染まっている

海はすべて野村さんの奥さんで埋まっていて
野村さんの奥さんのかすかな吐息が波を作る
そのように野村さんの奥さんは
打ち上げられるのを待っている

私はその海を
罪と名付ける







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