炎天下と青空/末下りょう
 
食家や料理人ならではの鮮やかで巧みな線引きに不思議と唾液がこぼれてきて面白いなと思いながら引き出しから包丁を出した


「 世界で一番格好いい職業は料理人、最も尊い仕事は農業とか漁業 」
そんな感じのことを親に言われて育った記憶がある


ぼくが育てたわけじゃないベランダのプチトマトとミニにんじんを水洗いして夏バテ対策の献立を考える

海のミルクと禁断の果実が暑さで煮え立つ脳に溢れて手抜きメニューがドバドバと押し寄せてくる


手を加えるたびに後戻りできなくなり誤魔化しがきかなくなり、素材を冒涜してしまう


冷蔵庫の冷気で頭を冷やし、半分にカットしてラップしておいた
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