片方だけの靴下/坂本瞳子
 
電柱の影に横たわった靴下は
どこから飛んできたのか
まさか誰かが脱ぎ捨てた訳ではないだろう
左足のための片方だけの靴下よ
いまやとても薄汚れて泥や埃に塗れて
雨にも風にも打たれたのだろう
野良犬に噛まれたこともあるかもしれない
鳥や虫に啄まれたりもしたかもしれない
右足用という対を失って
寂しげにさえみえるその様子に
物の哀れを覚えてみたりもするけれど
拾い上げてやろうという気にまでは至らない
この曲がり角が見えてくると
まだそこにあるだろうかと
気にはなるのだけれども
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