口火る/あらい
粘度の濃い黄土色の海で 汗も掻かずに泳ぎ着かれて
眠りを抱きしめあう 君と僕の合間に流れる
絵編とした溜息と御本とした嘔吐き
はこのなかに爛れた身体と心で作られた
腐った域を被覆で置いた、いい加減な『成り立ち』
土手から、眺めた対岸に椿道が
まあかな血をほとほと溢し、それで〈凡て〉
夢や現や等と云わず天秤に広く
亘る蝋燭の、ひとつ「勝手に灯ったのでしょ」
と花の着く煙りを撒いた、【唇】
闇夜に煌々と、瞑らな月唄うは物陰の、
洋蛾、薄水碧の。
たちきれぬほどか細く いと その翼少しだけ触れて
立木はまだ折れぬほどの風を慈しみ 孕んでは
あなたは損な嘘ばかり 吐き出して
私はそれを紡いでは シタタメて折ります
筆に下堕した文も掻かずに小奇麗に戯れた楔達が
穢れ意に添うように頭と躰を挿げ替えてそれで。
ひととしての死海に伝染り、感嘆に処する
砂上に涸れた華のいろを 憶えては
空論に綴じた栞の史を 準えました。
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