そしてまた、うた歌いの夜は、更けゆく/秋葉竹
ようやくうたを歌う理由を
手にすることができた瞬間から
あたしの好きなうたは
聴くことができなくなる
なんども、なんども、
なんども、なんども、
この身をゆだねた
なにを代償にするつもりもないあたしに
潮騒は巧妙に両手を広げて
終わりのない水平線まで
あたしの喪失をいざなうから
あたしの好きなうたは
聴くことができなくなる
残された希望と言えば
宵闇に横たわる海が
傷もない真っ正直な鏡となり
星も哭く、暗闇の夜空となる
それくらいのものさ
そう、
なんども、なんども、
なんどもなんども、なんども、
触れられない
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