人が待つもの4/チャオ
ディキンスンが待ち続けた明日は、きっと今日と変わらなかったんだろうと思う。平坦で、目に見えない変化に覆われた毎日。切り刻まれるような焦燥感とか、走り出したくなるような切迫感とか、何にも振り払うことなんか出来なかったんだろうな。でも、すごく、穏やかで、どこからも逃げやしない微笑で、「明日」を待ってたんだと僕は思う。だって、次に来る未来なんか変えなくても、充分だよ。見えはしないかもしれないけど、世界は笑ってる。世界の微笑と対峙するまで僕らは待つしかないいのだから。
二時間待ちの友人が来て、僕はあきれた顔をした。仕方ないから友人も申し訳なさそうな顔をした。所詮、僕らは友人だ。僕が待った時間も、友人が待たせた時間も違いはしないだろう。僕はそう思うことにして、不機嫌に街を歩き出した。
「遅すぎるよ」と、僕は5分に一回のペースで友人に呟いた。そのたびに友人は申し訳なさそうな顔をした。
次の世界が来るまで、どっちにしたって僕らは待ち続けるんだ。
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