その手をはなさない/ベンジャミン
遠い、遠い、記憶の中
不安で、不安で、しかたなかった
つないでいた手を
ほどかれたとき
まるで自分の一部を失ったかのように
泣きじゃくった
子供の頃
デパートのおもちゃ売り場で
お母さんに怒られている
子供はまるで
熱の塊のように赤くなって
小さな手をまるめて
しきりに涙をぬぐっている
お母さんは少しはなれて呼んでいる
けれど子供はその場をはなれず
ただただ
空っぽの手を縮んだように折り曲げて
赤い顔をこすっている
もう何に泣いているのか
わからなくなっているのかもしれない
子供はまるで
音の出るおもちゃと張り合うように
言葉
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