スプリング・エフェメラル/あらい
 
春は日傘の先で拡張する
出会いと別れを
幾年月も栽培された寒さや
温かさで感じる襖の奥に

常闇の重量を伴う、

密やかなるレトリックのいきものたち
例えれば桜前線あるいは雪解け水
図鑑に知ら〆るかわいいクエスチョン

地下に蓄え続ける。

第一印象は萌え芽ぐむ少年の存在。
しどろもどろな春風を
文庫本に栞にして媒介する

ひかくてき

日は長く影は短く薄く
地中の蟲の座標と大柄な花を
常識と白昼夢に飽和する。

垂れ流される午睡に呼び覚まされる
広告と伝言ゲームを夢に憶える

外界の水田ではひさしく、

長方形の瞼と下位返還を致したあかぎれが
ほどほど小柄な薄曇りを引き起こし
光もないシャボン玉を白杖に印した

年中歯を曝して悪酔い夜の闇に

なくしたはずの里山の、
公園に揺れるブランコに、
行方知れずの虻を見た。

そうであろうと散々頷く人形の
枯れた躰に托卵した土気色の赤裸々にも

皮膚上の、隠れ家に堆く疼く
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