桜と脳/
末下りょう
口の奥が何処よりも深いその人は 一人称以後の薄い唇に
なにかを落としたような声を
そっと埋める
最後の指のかたちで 語りかけながら
触れたのは
石の皮膚 濡れた風
床でわれた言葉と
揺れる壁の
彫刻のような影
シンクの食器が 音もなく水に沈み 終わらない喜劇の静けさ
波もなく 凪いだ階段は 雪の住みか
闇のような緑
美しい色にはいつも灰がある
桜のように
揺れる脳
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