許せやしない/坂本瞳子
許せないのは
あなたが忘れたことではなくて
あなたが忘れてしまったことを許すことができない自分自身だ
忘れてしまうくらいのことはよくある
すべてのことを覚えているなんて不可能だ
ど忘れしてしまうことだってあるだろう
どんなに大事なことだって忘れてしまうこともある
だのにあなたがそれを忘れてしまったという事実を受け入れられなかった
そんな自分が悲しくて情けなくて悔しくて
もうなんともしていられないほど憎らしくて
地団駄を踏み鳴らしても
頭を掻き毟ってみても
あちら側まで轟かせるぐらいの雄叫びを力の限りあげてみたけれど
どうしても許せないんだ
この自らに向かう怒りをなんとも抑えようがないくらい
どうしても許せないんだ
ただ許せないんだ
だからいまは放っておいて捨て置いて欲しいんだ
どうしたって許すことなんてできやしないんだから
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