爪なんていらない/竜門勇気
落ちてきたんなら
じゃなきゃどっか別の場所で会うはずだ
爪なんていらない
痛みも血も必要ない
コツさえ掴めば
奴隷みたいな暮らしは楽だぜ
奴隷になるまでの僅かな時間
しっかり麻酔の聞いた盲腸の手術みたいなもんさ
それでもあんたらは登ってく
誰かが人間らしくあるために
ぶっ壊されるために
ここよりマシな場所はいくらでもあるのに
僕のとこに来て
深い場所をまた壊す
役割が違うだけで
僕も君を壊してる
なにか意味があることなのだろうか?
君をぶっ壊すためにたどる道の中で
何度も思うよ
剥がれた爪が足元に転がって
拾うまもなく
君は落ちてくる
なにか意味があるのか?
奴隷みたいな歩き方を
奴隷みたいな喋り方を
奴隷みたいな考え方を
奴隷みたいな生き方を
君に仕込むたび頭がおかしくなりそうだった
でも君はちゃんと奴隷になろうとしてくれる
まともなヒーローがどこかにいたら
きっと一番に僕のとこに来るだろう
最悪の毒はここにいる
爪のない指をみながら
爪のない手をふる
最悪のクソだ、おれは
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