生の杣道/天寧
 
すべての中絶には意味がある(※)、と〉
番人を押しのけ
禁令を破って進めば
どこに辿り着くだろうか?
うすうす勘づいてはいるが
具現を阻む
何者かの(わたしの?)意志が
重くのしかかってくる
この中絶の番人に
わたしは問いかける
古い童謡のように
〈こうこはどうこの細道じゃ?〉

開ききる、とは?
死の開く生、とは?
生の開く死、とは?

開くなら
あなたの細胞
あなたの呼吸
あなたの門
の震える
同心がいいに違いない
わたしの殻は
門を通るには厚い
このパンドラの箱で
いたずらに断層を生むよりも
あなたに息吹を届けるほうが
よいのではないだろうか?

〈I'm me.〉
中絶に語り続けている
〈I'm me.〉
中絶に炸裂している

でも、今は――
異境を歩むエトランゼとして
未知の生命に
この瞬間
弾ける息吹を合わせる
鳴かない猫が
睫毛を揺らして微笑み
呼応する
印字されない重唱のように



(※吉本隆明 定本詩集? 「時のなかの死」)
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