わたしは美しい/末下りょう
 

一粒の砂から身動きが取れなくなるまえに 一粒の雨から花ひらく海にダイブするわたしは


美しい


荒波にのまれながら燃えさかる流星をキャッチするわたしは海の守護神となり わたしの大地を襲う必要がわたしに生まれる



春先のバス停でスカートがはらむ風にあしを飛ばされてしまうまえに

テクストを偽装するシステムのなかで

うまく笑えなくなるまえに

言えないことも聞こえないこともつれなくまっさらな季節を待ち

一粒の砂から身動きが取れなくなるまえに



もうすぐ雨が降りだす

始まりも終わりも果てもない雨が 

言ってしまったことも聞こえてしまったこともすべて砕き散らす


そんなふうに

だれもいないときのわたしが

いちばん美しい



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