小さな死Petite mort/草野大悟2
 
 なにもシンゾウやフミオやその傀儡のことだけを目くじら立ててあしざまにいうことはないじゃあないか、彼らは私に心酔しているんだからね、と桜の枝を咥えた富士山がいうので、それはそうですが、いちおう決まりというものがありますんで、などとわかりもしない理屈をこねたのだった。
 そのときおおきな欠伸が聞こえ、おおきな欠伸らしいものが聞こえ、たように感じたので、見上げるとまんまるな月がいて、もぐもぐ口をうごかしながら、よだれまでたらしていたので、よくよく天を見つめると、おそらくは南とおもわれる方角が割れたガラスのようにギザギザと欠落している。
 なんにもないんだねあんたには、という紫式部の声がきこえて、お
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