硝子のフィルム/松本 卓也
 
夜空を見上げるのが好きでした
夜空を見上げながら、あなたとお話をするのが、好きでした

豪奢なお屋敷の一室で、あなたは床に臥せていました
大きな窓の外に広がる、星の海に心馳せておりました

私はただ、物語を語るだけでした
私はただ、紛らわせたいだけでした

あなたは頭を振りました
あなたは違うと仰いました

だって星の広がる空は、こんなにも眩いではないですか
硝子の閉ざした夜空の先に、救いがあると信じるのです

あなたが旅立って幾星霜
私は終わりを探していました

誰かが私に語りかけ、誰かが私を壊しても

割れた硝子が久遠の夜空に散りばめられているのです

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