西側/末下りょう
わたしは殺されているべきだった
雪あかりの眩しい清らかな泥の入り江に
一切の終わりは奪われ
寒さにたじろぎながら握ってきた僅かな時間が脱兎のように消えていく
凍てつく手を握り 手を開き 手を擦り 何度も握り返す
なにも終わらないここで殺されて死ぬべきだったわたしたち
わたしはなにも見ずにただ聞いていた
あなたはなにも聞かずにただ見ていた
二人はなにも争わない
ましてや偽らない
どちらかが口を開けばどちらも消滅できた
わたしたちは殺されるほど強くはなかった
あなたは西の岸に立ち わたしは東の入り江にいた
あなたがそこに居る音が
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