あこがれ/末下りょう
 
満ち足りた空虚、真空が同時に充満でもあるという逆説 ─



めくるめく露出した壊れやすい肌をめぐりゆく眼差し 二つの柔らかな暗礁のあわいが引き起こす動揺と
同時に
爪先に打ち寄せることのない波の冷たさが示す
一つばかりの疑問

ぼくはきみの身体の外側には入れない


けれども入れないことを口実に
もっと上手く大切にしたい そうやって毎晩ぼくは童貞になり 包茎であり 一枚また一枚と 皮をむかれながら
内側に出てゆく

濡れた女王とO女と幼女の分離と繁殖に他ならないひと


取り澄ましているかのような空虚さの全域で惜しみなく崩れる器から発散する錯乱のなかに弱
[次のページ]
戻る   Point(2)