稜線/山人
 
 一月二十五日、山に行かなければならない、そんな義務感が私を支配していた。天気も思ったより好天になるらしく、夜明け前なのにひどく安定している。
 妻に握り飯を三個頼んでいたが、行先を言ってはいなかった。ほぼ単独で山に向かうことが多いので、必ず行き先を言ってから向かうことが多かった。
 昨晩のうちに大まかな準備をしておいた。冬山で長時間を想定し、予備の衣類と万が一クラックに落ちた時のシャベルとかロープなどを準備した。単独行なので、そんなケースには咄嗟に役に立つかどうかはわからないが、雪山にシャベルは必須である。もちろん登山専用シャベルだから分解してザックに入れておいた。
 昨年十二月より、冬期
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