フーディニ・フーダニット(Houdini Whodunit)/クリ
ナイフが胸に深々と突き刺さっていったとき、森は叫ぶこともできなかった。
犀川はぽつりと言った。
「ということは、犯人は僕たち五人の中にはいないということになる」
皆はその真意をしばらく計りかねるかのように眉をしかめた。
「だってそれはあり得ないわ。この屋敷はいわば密室じゃないかしら」萌絵は怒ったように犀川に反論した。
「ああ、現実の殺人事件ではまあ起こりえない『密室殺人』だよ、確かに」
「破られないトリックは存在しないし」と四季。
殺人事件の撹乱は、ほとんどが凶器(What done it)隠滅、アリバイ(When done it)工作でありトリック(How done it)
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