言い出せなくて/クリ
桜の花がもうすぐ咲く頃に
僕らはいつも別れた
それから
奇跡的に誰もいない桜の花びらの嵐の中
僕は「埋めてくれ」と言うばかりに歩みを止めた
いつもそうだった
だから
少しだけいい匂いのする過ごしやすい夜更けに
僕はたしかに一人でいることにした
君は何度も去っていった 暖かい方へ
だから僕は春と夏を見ないようにしたんだよ
いつもそうしてた
そうして
上着をもう一枚着ようか迷いだす頃に
差出人のない落ち葉の手紙が届く
まるでずっといっしょだったかのように
いつかまた破られる約束をする
君の髪を撫でながら気づく
君の匂いが少し 変わったと
それを言い出す
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