「歌う鳥」と「歌う人」/ベンジャミン
 
が もしみんながそう思ってくれるなら 僕らがお互いを愛しあうことは難しくないのです」
鳥はすっかり黙ってしまいました。
「だから・・・ 鳥さん あなたはどうか(歌う鳥)であってください できることを高らかに歌う鳥であってください」
そこまでいうと、旅人は静かに歩き去ってしまいました。

鳥は呼び止めようと思ったのですが、うまく声がでませんでした。
鳥は大きく息をすーっと吸い込むと、もう見えなくなってしまった深い森の中、旅人の背中に向かって歌い始めました。
いままでだしたこともない、それはそれは美しい声で、まるで空を飛んでいるような気持ちで歌ったのでした。

森を抜けようとする旅人には、その歌が聞こえていました。
背中で聞くようにしながら、空を見上げた旅人の目には、遠くの空から集まってくる数千羽の鳥の群れが映っていました。

そして

「ああ これからも僕は(歌う人)であろう・・・」と、呟いたのでした。



  (完)
   
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