詩の日めくり 二〇一八年十三月一日─三十一日/田中宏輔
 

「うん。」
悲鳴の本体が移動した。
ふたりがはじめて会ったのは2年まえってことか。
ぼくは、もうちょっとのところで
こう言いそうになった。
「このあいだ、チューブで見た
 フィリピンのゲイ・ビデオに出てくる、かわいい男の子に似てるよ。」
って。
そう言わなかった。
そのかわり、こう言った。
「これまでで、最高のセックスって、どんなのだった?」
「おなじひとと
 おなじことしても
 こちらの気分で、ぜんぜん違った感じに思えますし。」
くびをひねるぼく。
「でも、こういうのがよかったとか、あるんちゃう?」
と、ひつこく食い下がるので
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