対話篇 ?/やまうちあつし
の向こうのかの人は
明確に拒否する
人は誰でも生まれつき
額に冠を頂いている
脱ぎ捨てようとしても
決してできるものではない
ほら、あなただって
と
こちらを指さす
自分の頭を触ってみるが
冠なんて被っていない
(ように思われる)
ふと
画面の向こうを何かが横切る
黒くしなやかな曲線
まさか
と冷や汗が出る
ちょっと
大丈夫かい
家の中まで
入り込んではいないかい
かの人は穏やかな表情で
パンをちぎって口に運ぶ
もうひとちぎりして
自分の後方にぽとり
そこへ集まる黒い影
やはり
部屋にいる
その人の後ろに一匹
行儀よく隣に一匹
ずうずうし
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