白い砂漠/草野大悟2
 
白い砂漠に
矢のような光が突き刺さる朝
摂氏五十度の砂嵐に
ラクダが弱音を吐く

そのころ
私たちの小さな家では
つば広の白い帽子を右手で押さえ
吹きあれる海を見ながら
女が
あのころをさがしている

どれだけさがしても
海は大波をかえすだけで
あのころを連れてはこないと知った夏
女は風になって
鈍色の空へと飛び立っていった

白い砂漠に夕暮れが訪れるころ
私たちは最果ての食事をとる
突然現れたフェネックキツネが
砂漠主義を主張して
私たちの未来を語ってみせたりする

夕暮れが笑う空では
女の白い帽子が
虹色の潮を吹きながら
雲と遊んでいる

屋根のないテントで
星空を仰ぎながら眠る砂漠には
人を幸せにする魔法が
確かに、ある
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