柿の知らせ/服部 剛
 
庭で夕空を仰いでいると
足下の、少し離れた場所が 
ふいに がさっ と鳴った

古い柿の木から
枯葉の吹き溜まりに
実がひとつ、落ちたのだ

よく熟れた柿は
ほんのりと夕陽に染まり
僕に微笑む

(なぜきみは、そんなに幸せそうなのかい?)

家に入り 
食卓で腰を下ろし、茶を啜(すす)る 
静寂(しじま)のひととき 

幸いを黙して語る、柿の実よ 
僕は想いを巡らせる 
機が熟すのを、待つように







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