前夜/紋甲メリー
 
手くらがりから詩片は
あふれる
ひと群れの鳩が雲に飲まれる
(わたしが眠っている隣で)

晴れた記憶野にからしの種を蒔く
轍のぬかるみに空が映っている
いきものたちはみな早起きで
時折あわてたように小さな糞をする

ここへはひとりで来たのか
それとも別のだれかと
透ける木立 あどけない春の地勢が
押し戻されてゆく夜のさなかに

さよならとだけ最後に
告げてくれればよかった
産み落とされたかなしみが不意に
働くわたしの手首を掴む
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