標本になった眼球/島中 充
 
標本になった眼球
         島中 充          
ガラスの向こう そのむこう 窓ガラスのむこうに
水銀灯に照らされ さくらの花が満開でした
風が吹いたのか
さらさら さらさらと 寂しく花びらが散っています

レモンの匂う芳香剤の病室で
男はベットの上に胡坐をかいていました
鬼籍に書き込まれる日々を 
語ることのなかった履歴を 
男は死んで初めて語ることができるのでしょうか
学問で身を立てよう
資本論を読んでいました 大学を追われ
二等兵になりました 
しかたなく人を殺しました 

男はベットの上に胡坐をかいてじっとシーツ
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