痣ができた/坂本瞳子
手の甲に痣ができた
どこにぶつけた訳でもないのに
赤紫のそれが鮮明に色を放っている
そして不安を覚える
夢見心地に徘徊しているのではないかと
月も星も輝くことのない暗い空の下を
どれほど歩いたことだろう
まったく記憶にはないけれど
痛みもないのだけれども
この左の手の甲の赤紫は
なんとも説明のしようがないのだ
そしてまた夜がやって来る
いっそのことこの身体は寝台にでも
括り付けたほうがよいのではないだろうか
そんな風にさえ思うのだけれども
そんなことができるはずもなく
ただただ不安に苛まれ
不安にかられてやっと朝方眠りに堕ち
目が覚めたときにはまたもや
新しい痣ができている夢を見るのだ
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