出発点(水飴と溺れた蟻)/あらい
 
瞳に傷つけられたどんぐりの、虫の居所と思い詰める
熟れた葡萄色の眼と契った、星空などすでに臥したのに

      囀り亘る風や光はあるがままを知ったかぶる。

      ただ殺められた円居におちる
      影の氾濫に溺れていた
      繰り返されるだけのときを謳歌する、
      日の当たらない坂道、その下り坂、
      なんて素晴らしい曇天に立ち尽くす。

             ただ 流された騙し船が
            重ねた手も縺れ併せた体も

のりあわせたもの それぞれに散っただけの、光に蹣跚めく
 息をのんで、何度もぶつかりあい、いまさら 残酷なほど。
  永劫に転げ落ちる、映し出す楽な背中を、知っただけの

わたしは、玻璃のあまだれ
そこにひとかけらの砂糖をこぼした
たったそれだけのあおいとりをもみ消し
ただ無知であるがゆえ、それは口々にして

どこにも いなかった、しあわせだったと、凍り付いた華
    その至宝を噛み潰したものは 晩秋と見越している。

戻る   Point(0)