リーゼント/たもつ
が届かないメリケン粉の密売人は
自分の不幸が印刷された世界名作全集第89巻の挿絵と
勝てないジャンケンをしているうちに大人になったのだ
せせらぎはそよ風よりも優しい
リーゼントにとってそんなことはあたりまえじゃあないか
だというのに肘の重量に耐え切れず陥没したテーブルの脚に
すがりつき僕はリーゼントのことなどすっかり忘れている
床に落ちてる一本の髪の毛を齧ると
その律動はすべての地図記号をト音記号に摩り替える僕の一端
あまりに悲しみに明け暮れてしまって
各駅停車の停まらない駅で途中下車した僕は
大きく張り出した肩甲骨がつっかえて自動改札機を通過できない
その鼻先をかすめて遠ざかっていく僕のヒップ!
その後を俯き加減についていく僕のリーゼント!
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