「あなたを待っていたのよ」なんて、退屈している女ならみんな口にするものだ/ホロウ・シカエルボク
街外れの巨大な交差点に遺構のように居座っている歩道橋の橋脚に点在するこびりついたある種の伝染病による斑点を思わせる赤錆は、それが置き去られた無機物に歌える唯一の詩だとでも叫んでいるみたいに見えた、かつては数えきれない人々が逸りながらそこを渡って行ったかもしれない、でもいまそのあたりを行き過ぎているものは、いつかなにもかもを薙ぎ倒してしまおうと目論んでいるかのような郊外特有の猛烈な風ばかりだった、吹きすさぶ風の中に居るとまるで何かを誤魔化されているような気分になる、隠していることを悟られまいとのべつ幕なしに喋り続ける詐欺師と対峙しているみたいな、そういう気分、もしもこの風をバイクのカバーを外すみ
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